うつ病とは

うつ病は、日常生活に深刻な支障をきたす心の病のひとつです。
単なる気分の落ち込みとは異なり、長期にわたって気力が湧かず、何事にも楽しみを感じられなくなるなどの「抑うつ状態」が続くのが特徴です。
日本では、人口の約5〜10%が生涯のうちにうつ病を経験すると言われており、決して珍しい病気ではありません。
それにもかかわらず、うつ病に対する社会的な理解はまだ十分とは言えないのが現状です。
症状を抱える本人が、自分の性格や努力不足のせいだと感じたり、周囲から「怠けている」と誤解されることも少なくありません。こうした誤解が、適切な支援を受ける妨げになることもあります。
うつ病は、脳内で働く神経伝達物質のバランスが崩れることが主な原因の一つとされており、思考や感情、行動にまで大きな影響を与えます。
したがって、「心の弱さ」や「性格の問題」として片付けるのではなく、れっきとした医療的なケアが必要な病気として正しく理解することがとても大切です。
よりそいメンタルクリニックでは、うつ病で悩む方に向けて、診断から治療、生活面でのサポートまでを総合的に提供しています。
もしご自身や身近な方に「もしかして…」と思うような症状がある場合は、早めにご相談いただくことをおすすめします。
うつ病を発症する原因

うつ病は、ひとつの原因だけで発症するものではなく、さまざまな要因が重なり合って引き起こされるケースがほとんどです。
生活環境の変化、社会的な孤立、サポート不足など、複数の条件が複雑に絡み合うことで、症状が現れてくることが一般的です。
ここでは、うつ病の要因を大きく3つのタイプに分けて、それぞれの特徴を紹介します。
心因性(心理的なストレスが原因)
心因性のうつ病は、精神的な負担やショックな出来事がきっかけとなって起こるタイプです。
たとえば、職場の過剰なプレッシャーや人間関係の不和、離婚・失業などの大きなライフイベントが引き金になることがあります。
特に、感受性が強い人や周囲に気を配りやすい性格の人は、ストレスへの影響を受けやすく、心因性のうつ症状が現れやすいとされています。
内因性(脳内の機能異常が原因)
内因性うつ病は、脳内の神経伝達物質がうまく働かなくなることで起こるタイプです。
セロトニンやノルアドレナリンといった、感情や気分をコントロールする物質のバランスが崩れることで、うつ状態を引き起こすと考えられています。
また、遺伝的な要素も関係しており、家族にうつ病の既往がある場合は、発症リスクが高まると言われています。
身体因性(身体的な病気が原因)
身体的な健康問題が原因で起こるうつ病は、身体因性と呼ばれています。
慢性の痛み、糖尿病、甲状腺の病気、ホルモンの乱れなどがこのタイプの引き金となることがあります。
こうした体の不調が、心にも影響を及ぼし、精神的なバランスを崩してしまうのです。
うつ病の主な症状

うつ病というと、「気分が落ち込む」「やる気が出ない」といった心の不調ばかりに目が向きがちですが、実は身体にもさまざまな影響を及ぼす病気です。
精神的な面と身体的な面の両方に症状が現れるため、見逃さずに注意することが大切です。
以下に、うつ病によく見られる代表的な症状を紹介します。
- 何をしても楽しめず、気分が沈んだままになる
- 未来に対して希望が持てない
- 注意力が散漫になり、ミスが増える
- 何をするにも気力がわかない
- 不安に襲われやすくなる
- 自分には価値がないと感じるようになる
- 集中力が続かず、考えがまとまらない
- 理由もなく悲しくなったり、涙が出る
- ネガティブな思考が頭から離れない
- ちょっとしたことでイライラする など
- 夜なかなか眠れない、または途中で目が覚めてしまう
- 食欲が落ちて体重が減少する
- 心臓がドキドキしやすくなる(動悸)
- 微熱が続くが原因がわからない
- 頭痛が頻繁に起こる
- 常に体がだるく、疲れが取れない
- 朝起きるのがつらく、布団から出られない
- 食事がおいしいと感じられず、食欲がわかない
- 性的な関心や欲求が減る など
うつ病の種類

うつ病は、大きく分けて「単極性うつ病」と「双極性うつ病」の2つのタイプがあり、それぞれに異なる特徴があります。
単極性うつ病とは?
単極性うつ病は、うつ病の中でも最も一般的なタイプで、抑うつ気分が継続的に続くのが特徴です。
気分が落ち込んだ状態が長引き、物事への関心が薄れたり、以前は楽しめていたことに喜びを感じられなくなったりします。
このタイプのうつ病では、疲れやすさ、集中力の低下、不眠や過眠といった症状も伴うことが多く、仕事や家事など、日常のパフォーマンスが著しく低下するケースもあります。
自己評価が極端に低くなったり、自責の念を抱くようになることもあり、注意が必要です。
双極性うつ病とは?
双極性うつ病(双極性障害)は、気分の波が大きく変動するタイプのうつ病です。
気分が落ち込む「抑うつ状態」と、異常なまでに気分が高ぶる「躁状態」とが周期的に現れるのが特徴です。
躁状態のときには、エネルギーが過剰に高まり、非常に活動的になったり、判断力が鈍って衝動的な行動に出てしまうこともあります。
一方、抑うつ期には、単極性うつ病と似たような症状が現れますが、その持続期間や強さには個人差があります。
うつ病は早急な治療が必要

うつ病の症状は、つい見過ごされがちです。「ちょっと気分が落ち込んでいるだけ」「そのうち元に戻るだろう」と自己判断してしまい、受診のタイミングを逃してしまうケースも多く見られます。
しかし、うつ病は単なる気分の波ではなく、放置すれば心身に大きなダメージを与えることがあります。
状態が進行すれば、日常生活に大きな支障をきたすだけでなく、深刻なケースでは命に関わる危険性も否定できません。
だからこそ、症状に気づいた時点で早めに専門医を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。
早期の対応が、その後の回復に大きな差を生みます。
自分自身の心のサインを見逃さず、必要なサポートを受けることが健康を取り戻すために大切です。
うつ病の治療方法

うつ病の治療にはいくつかの方法があり、症状やその人の生活背景に応じて、最適な治療プランを医師と一緒に考えながら進めていくことが大切です。
ここでは、代表的な3つの治療法をご紹介します。
1. 休養をとる
うつ病を抱えている方は、心身ともに大きく疲弊していることが多く、まずはしっかりと休むことが最優先です。
精神的・身体的エネルギーを回復させることで、症状が徐々にやわらいでいく可能性があります。
また、うつの原因が学校や仕事でのストレスにある場合は、休職や休学といった選択を検討することも、回復への一歩となります。
2. 精神療法
カウンセリングや認知行動療法など、心の面から支える治療も非常に有効です。
専門のカウンセラーと話す中で、自分の考え方の癖やストレスの受け止め方に気づき、少しずつそれを調整していくことができます。
精神療法を通してストレスとの付き合い方を学ぶことで、回復がスムーズになることが期待されます。
3. 薬物療法
抗うつ薬をはじめとする薬物療法も、多くのうつ病治療に取り入れられています。
薬の種類や量は、患者一人ひとりの状態に応じて医師が判断し処方します。
効果があらわれるまでには1週間〜数週間かかることが多く、すぐに変化が感じられなくても途中で服用をやめず、医師の指示に従うことがとても重要です。
自分にとって最適な治療を見つけるには、専門家とじっくり話し合いながら取り組んでいくことが欠かせません。
うつ病は適切なサポートを受けることで、少しずつ改善へと向かっていきます。
うつ病の判断基準

うつ病の診断には、世界的に使用されている「DSM-5」という診断基準が用いられます。
現在のご自身の状態がうつ病に当てはまるかどうかを知りたい方は、以下のセルフチェックを参考にしてみてください。
いくつかの項目に当てはまる場合、うつ病の可能性が考えられます。その際は、できるだけ早めに当院までご相談ください。
専門スタッフが丁寧にお話を伺い、必要に応じて適切なサポートをご提案いたします。どうか一人で抱え込まず、お気軽にご連絡ください。
